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情報処理と環境に関する研究報告

AL_COM.IER1 March 1,2002

 

式(2.2)の系についての考察を幾つか挙げる.以下の考察では,式(2.2)の理想的な記述を前提としている.

  生体の特性についての考察

 生体の特性が式(2.2)の右辺で表現できるので,表現型の発現に依存してこの特性の記述が決定する.しかし,入力の組合せに対応した出力がこの右辺の記述で表現できる.このために,実際に各時間に生体が反応したときの値以上の多くの値が式(2.2)の右辺で得ることが考えられる.

  生体の反応についての考察

 生体の反応が式(2.2)の左辺で表現できる.時間に対応している生体システムの出力がその左辺である.一般には,生体の反応は各時間に対応している必要がある.このために式(2.2)では左辺の記述で反応であることを定める.

  適応についての考察

 式(2.2)の左辺を使った適応の評価ができる場合がある.一般には時間に対応する生体の反応の経過から,生物の諸性質や変化の過程の評価ができることがある.適応については,文献1)で次のようになる.

1. 「生物のもつ形態,生態,行動などの諸性質が,その環境のもとで生活していくのにつごうよくできていること,あるいは生物個体の生存と繁殖の成功に寄与する生物個体の性質.」1)

2. 「生存や繁殖の向上をもたらす進化的な変化の過程.」1)

3. 「自然淘汰によっておこる個体群内の遺伝的変化の過程で,それによって,個体の遺伝的な性質が向上すること.」1)

4. 「選択的な有利性のために個体群内にひろまった特性.」1)

上記の4は個体群に関するものであるので,本報告書では扱わない.次に,適応についての評価を困難であると,著者が考える事柄について述べる.

1では,「環境のもとで生活していくつごう」1)に依存する点と「生物個体の生存と繁殖の成功」1)に依存する点

2では,「生存や繁栄の向上」1)に依存する点

3では,「個体の遺伝的な性質が向上」1)に依存する点

著者は,上述1.〜3.のそれぞれを生物学・物理学・数学・工学などの学問から法則を得て評価することが困難であると判断する.

  生物の多様性についての考察

 著者は,式(2.2)の右辺から生物の多様性が説明できることを推測する.関数lに基づいて生物の獲得した情報への対応が異なる.
各種に分化した生体システムの式(2.2)の右辺を記述している関数lの類似の程度が一様でないことを前提として,著者は生物の多様性が説明できることを推測する.

  生物の活動についての考察

 式(2.2)の左辺で生物の活動について説明できる.生体の反応から生物の活動が生じる.一般に,物理学の時間に生物の活動が対応する.生命活動についてのある条件をみたす点の軌跡を式(2.2)の左辺から得ることができる.これらの点の軌跡で説明できる生物の活動がある.

遺伝的調節についての考察

 著者は,各入力から関数lに対応関係を与える写像で遺伝的調節を説明できることを推測する.「遺伝情報は,蛋白質に対応する遺伝子の情報のみならず,情報解読に必要な情報,情報発現の制御に必要な情報など,生物が自己と同じ構造のものを複製するのに必要なすべての情報を含んでいる」1).著者は,このようなある遺伝情報の発現やその停止などに基づいて表現型が異なる場合を推測する.しかし,現段階では本研究室は遺伝情報の発現が必ず式(2.2)の右辺に記述できること,を保証できない.

 

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